○東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例
平成二三年三月一八日
条例第三六号
東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例を公布する。
東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例
目次
前文
第一章 総則(第一条―第五条)
第二章 耐震化指針及び特定緊急輸送道路の指定(第六条・第七条)
第三章 耐震化に係る施策の推進(第八条―第十七条)
第四章 雑則(第十八条)
第五章 罰則(第十九条―第二十一条)
附則
阪神・淡路大震災では、建築物の倒壊や火災により多数の人々が尊い命を落とし、道路、鉄道等の都市基盤も大きな損害を被るなど、甚大な被害と混乱が生じ、都市における大地震の危険性が露呈し、我々都民にも多くの教訓を残した。
建築物が地震により倒壊した場合、少なからず道路、隣地等の周囲に影響を及ぼす。倒壊した建築物が道路を閉塞すれば、震災時の避難、消火活動等を妨げることになりかねないが、特に、都市においては、建築物が密集していることにより倒壊時の影響は大きなものとなる。そのため、都市における建築物の所有者は、耐震性能を確保する社会的責務を有していることを自覚し、この責務を全うするためには、耐震性能が明らかでない建築物について耐震診断を行い、耐震性能が不十分な場合には耐震改修等を行うことが不可欠である。
とりわけ、幹線道路は、大地震の発生時に救急救命活動の生命線となり、緊急支援物資の輸送、復旧及び復興の大動脈となるため、東京都は主要な幹線道路を緊急輸送道路に指定して整備を進めてきたが、沿道の建築物が倒壊し、道路を閉塞してしまえば、その効果も無に帰しかねない。
東京は、日本の首都として政治、経済、文化等の中枢を占め、極めて重要な役割を果たしているが、首都直下地震の切迫性も指摘されている中、こうした緊急輸送道路沿道の建築物の耐震化が十分に進んできたとはいい難い状況にある。大地震の発生に対し、被害を最小限に抑え、迅速な復旧等を図るべく震災時における緊急輸送道路の機能を確保することが喫緊の課題となっている。
東京都は、都民や東京に集う人々の生命と財産を守り、首都東京の機能を維持するという決意を表明するとともに、基礎的な地方公共団体である特別区及び市町村との役割分担の下、都民と連携して緊急輸送道路沿道の建築物の耐震化を推進するため、この条例を制定する。
第一章 総則
(目的)
第一条 この条例は、震災時における避難、救急消火活動、緊急物資の輸送及び復旧復興活動を支える緊急輸送道路の機能を確保するため、沿道建築物が地震により倒壊して緊急輸送道路を閉塞することがないよう、沿道建築物の耐震化を推進する措置を講ずることにより沿道建築物の地震に対する安全性の向上を図り、もって都民の生命、身体及び財産を保護することを目的とする。
(定義)
第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 緊急輸送道路 建築物の耐震改修の促進に関する法律(平成七年法律第百二十三号)第五条第三項第三号の規定により緊急輸送道路として東京都耐震改修促進計画に記載された道路をいう。
二 沿道建築物 建築物のいずれかの部分の高さが東京都規則(以下「規則」という。)で定める高さを超えるもの(昭和五十六年六月一日以後に新築の工事に着手したものを除く。)であって、その敷地が緊急輸送道路に接するものをいう。
三 耐震診断 第六条第一項の指針に定める方法により地震に対する安全性を評価することをいう。
四 耐震改修 第六条第一項の指針に定める地震に対する安全性の基準に適合させることを目的として、増築、改築、修繕若しくは模様替又は敷地の整備をすることをいう。
五 耐震改修等 耐震改修を行い、又は全部を除却し、若しくは一部を除却し、若しくは全部若しくは一部を移転して建築物のいずれの部分の高さも規則で定める高さ以下のものとすることをいう。
六 耐震化 耐震診断を実施して第六条第一項の指針に定める地震に対する安全性の基準に適合することを明らかにすること又は耐震改修等を実施することをいう。
(平二六条例四三・一部改正)
(都の責務)
第三条 東京都(以下「都」という。)は、震災時における緊急輸送道路の機能を確保するため、広域的な観点から、緊急輸送道路の機能及び重要性並びに沿道建築物の耐震化の公共性に関する啓発及び知識の普及に努め、沿道建築物の耐震化を促進する施策を総合的に推進するものとする。
(平二六条例四三・一部改正)
(区市町村との連携)
第四条 都は、この条例の施行に当たっては、特別区及び市町村(以下「区市町村」という。)と緊密な連携を保ち、その理解と協力を得るよう努めるとともに、区市町村の実施する沿道建築物の耐震化の促進に関する施策を支援するものとする。
(所有者の責務)
第五条 沿道建築物の所有者は、地震により当該沿道建築物が倒壊し、緊急輸送道路を閉塞した場合における被害の影響の広範さに鑑み、自らの社会的責任を認識して当該沿道建築物の耐震化に努めるものとする。
第二章 耐震化指針及び特定緊急輸送道路の指定
(沿道建築物の耐震化指針)
第六条 知事は、沿道建築物の耐震化の実施について技術的な指針(以下「耐震化指針」という。)を定めなければならない。
2 耐震化指針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 地震に対する安全性を評価する方法
二 地震に対する安全性の基準
三 その他地震に対する安全性に関すること。
3 知事は、耐震化指針を定め、又はこれを変更したときは、速やかに、これを告示しなければならない。
(特定緊急輸送道路の指定)
第七条 知事は、緊急輸送道路のうち特に沿道建築物の耐震化を図る必要があると認めるもの(以下「特定緊急輸送道路」という。)を指定することができる。
2 知事は、特定緊急輸送道路を指定しようとするときは、規則で定めるところにより、あらかじめ当該特定緊急輸送道路の存する区市町村の長の意見を聴かなければならない。
3 知事は、特定緊急輸送道路を指定したときは、これを告示しなければならない。この場合において、当該特定緊急輸送道路に係る第十二条第一項第一号に規定する日についても、併せてこれを告示しなければならない。
4 前三項の規定は、特定緊急輸送道路の指定の解除について準用する。
第三章 耐震化に係る施策の推進
(耐震化状況の報告)
第八条 前条第一項の規定に基づく特定緊急輸送道路の指定の効力が生じる日における当該特定緊急輸送道路に係る沿道建築物(以下「特定沿道建築物」という。)の所有者(所有者と管理者とが異なる場合においては、管理者。次項並びに第十条第二項及び第四項において同じ。)は、同日から三箇月以内に、当該特定沿道建築物について、耐震診断又は耐震改修の実施状況その他の地震に対する安全性に関する事項を、規則で定める報告書により知事に報告しなければならない。ただし、第十条第二項又は第四項の規定に基づく報告をする場合は、この限りでない。
2 前項の報告書に記載した事項に変更が生じた場合は、所有者は、変更が生じた日から三十日以内に、規則で定める報告書により、その旨を知事に報告しなければならない。ただし、第十条第二項又は第四項の規定に基づく報告をする場合は、この限りでない。
(耐震化状況報告に関する指導等)
第九条 知事は、特定沿道建築物の所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)に対し、前条各項の規定による報告について必要な指導及び助言をすることができる。
(特定沿道建築物の耐震化)
第十条 特定沿道建築物の所有者は、当該特定沿道建築物について次に掲げる者のうちいずれかの者が行う耐震診断を実施しなければならない。ただし、当該特定沿道建築物について、既に次に掲げる者が行う耐震診断を実施している場合又は耐震改修を実施している場合は、この限りでない。
一 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第七十七条の二十一第一項に規定する指定確認検査機関
二 建築士法(昭和二十五年法律第二百二号)第三条から第三条の三までの規定に基づき当該特定沿道建築物と同種同等の建築物を設計することができる一級建築士、二級建築士又は木造建築士
三 住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成十一年法律第八十一号)第五条第一項に規定する登録住宅性能評価機関
四 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第一条の三第一項に規定する地方公共団体
五 前各号に掲げる者のほか、耐震診断を行う能力がある者として規則で定めるもの
2 特定沿道建築物の所有者は、当該特定沿道建築物について前項に規定する耐震診断を実施した場合は、耐震診断の実施が完了した日として規則で定める日から三十日以内に、規則で定める報告書により、その旨を知事に報告しなければならない。
3 耐震化指針に定める地震に対する安全性の基準に適合しない特定沿道建築物の所有者は、当該特定沿道建築物について耐震改修等を実施するよう努めなければならない。
4 特定沿道建築物の所有者は、当該特定沿道建築物について耐震改修等を実施した場合又は当該特定沿道建築物が火災、震災、水災、風災その他の災害により滅失し、若しくは損壊して建築物のいずれの部分の高さも規則で定める高さ以下のものとなった場合は、耐震改修等の実施が完了した日として規則で定める日又は当該特定沿道建築物が滅失し、若しくは損壊した日から三十日以内に、規則で定める報告書により、その旨を知事に報告しなければならない。
(沿道建築物の耐震化に関する指導及び指示)
第十一条 知事は、震災時における救急消火活動、緊急物資の輸送及び復旧復興活動を支える緊急輸送道路の機能を確保するため、沿道建築物の耐震化の適確な実施を確保する上で必要があると認めるときは、当該沿道建築物の所有者等に対し、当該沿道建築物の耐震化について必要な指導及び助言をすることができる。
2 知事は、震災時における救急消火活動、緊急物資の輸送及び復旧復興活動を支える緊急輸送道路の機能を確保する上で、沿道建築物について必要な耐震診断が実施されていないと認めるときは、当該沿道建築物の所有者に対し、期限を定めて、耐震診断を実施するよう必要な指示をすることができる。
(平二六条例四三・一部改正)
(耐震診断を実施しない場合の公表)
第十二条 知事は、震災時における救急消火活動、緊急物資の輸送及び復旧復興活動を支える緊急輸送道路の機能を確保するため、次の各号のいずれかに該当するときは、当該特定沿道建築物について必要な耐震診断が実施されていない旨及び当該特定沿道建築物の所在地その他の当該特定沿道建築物を表示するために必要なものとして規則で定める事項を公表することができる。
一 特定緊急輸送道路ごとに知事が別に定める日までに、正当な理由がなく必要な耐震診断を実施しないとき。
二 前条第二項の規定に基づく指示を受けた特定沿道建築物の所有者が、当該指示に係る期限経過後も、正当な理由がなく必要な耐震診断を実施しないとき。
2 知事は、前項の規定による公表をしようとするときは、規則で定めるところにより事前に当該特定沿道建築物の所有者に意見書の提出その他の方法により意見を述べる機会を与えるものとする。
(平二六条例四三・一部改正)
(特定沿道建築物の耐震診断実施命令)
第十三条 知事は、第十一条第二項に規定する指示を受けた特定沿道建築物の所有者が、当該指示に係る期限経過後も、なお正当な理由がなく必要な耐震診断を実施しない場合であって、震災時における救急消火活動、緊急物資の輸送及び復旧復興活動を支える緊急輸送道路の機能を確保するため特に必要と認めるときは、当該所有者に対し、期限を定めて、当該指示に係る耐震診断を実施すべきことを命ずることができる。
(平二六条例四三・一部改正)
(特定沿道建築物の耐震改修等実施指示)
第十四条 知事は、特定沿道建築物が耐震化指針に定める地震に対する安全性の基準に適合していないと認める場合であって、震災時における救急消火活動、緊急物資の輸送及び復旧復興活動を支える緊急輸送道路の機能を確保するため特に必要と認めるときは、当該特定沿道建築物の所有者に対し、当該特定沿道建築物について耐震改修等を実施するよう指示することができる。
2 知事は、前項の規定による指示を受けた特定沿道建築物の所有者が、正当な理由がなく、当該指示に従わなかったときは、規則で定める事項を公表することができる。
(平二六条例四三・一部改正)
(立入検査等)
第十五条 知事は、第八条各項並びに第十条第二項及び第四項に定めるもののほか、第十一条第二項及び第十二条から前条までの規定の施行に必要な限度において、沿道建築物の所有者等に対し、沿道建築物の地震に対する安全性に係る事項に関し報告させ、又はその職員に、沿道建築物、沿道建築物の敷地若しくは沿道建築物の工事現場に立ち入り、沿道建築物、沿道建築物の敷地、建築設備、建築材料、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の求めに応じて提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(助成)
第十六条 知事は、沿道建築物の所有者に対し、当該沿道建築物の耐震化に要する費用について、必要な助成を行うことができる。
(耐震化状況の公表等)
第十七条 知事は、第八条各項並びに第十条第二項及び第四項の規定による報告並びに第十五条第一項の規定による報告及び検査に基づき、特定沿道建築物の耐震化の状況を、規則で定めるところにより公表するものとする。
2 知事は、沿道建築物の耐震化を促進させるために必要があると認めるときは、沿道建築物の耐震診断又は耐震改修等の実施状況その他の当該沿道建築物に関する情報を、建築物の耐震改修の促進に関する法律第二条第三項に定める所管行政庁に提供することができる。
第四章 雑則
(委任)
第十八条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行について必要な事項は、規則で定める。
第五章 罰則
(罰金)
第十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 第八条各項又は第十条第二項若しくは第四項の規定による報告書に虚偽の記載をした者
二 第十三条の規定による耐震診断の実施命令に違反した者
三 第十五条第一項の規定による報告について虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
(両罰規定)
第二十条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても同条の罰金刑を科する。
(過料)
第二十一条 第八条第一項第十条第二項又は第十五条第一項の規定に基づく報告をしなかった者は、五万円以下の過料に処する。
附 則
この条例は、平成二十三年四月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 第八条、第十九条第一号(第八条各項に係るものに限る。)、第二十条及び第二十一条(第八条第一項に係るものに限る。)の規定 平成二十三年十月一日
二 第十条、第十一条第二項、第十二条から第十五条まで、第十七条、第十九条第一号(第八条各項に係るものを除く。)、第二号及び第三号並びに第二十一条(第八条第一項に係るものを除く。)の規定 平成二十四年四月一日
附 則(平成二六年条例第四三号)
この条例は、平成二十六年四月一日から施行する。