○東京都環境基本条例
平成六年七月二〇日
条例第九二号
東京都環境基本条例を公布する。
東京都環境基本条例
目次
前文
第一章 総則(第一条―第八条)
第二章 環境の保全に関する基本的施策(第九条―第二十三条)
第三章 地球環境の保全の推進等(第二十四条)
第四章 東京都環境審議会及び東京都環境保全推進委員会(第二十五条・第二十六条)
附則
人間は、限りない自然の恵みの下で生命を育んできた。
しかし、近時の科学技術の発達により、私たちの生活が便利で活力に満ちたものとなる一方で、資源及びエネルギーが大量に消費され、自然の生態系にまで影響が及ぶこととなり、私たちの生命及び生活の基盤である地球の環境が脅かされるまでに至っている。
私たちの住む東京では、歴史的地域的特性を生かしながら人間性豊かな都市と快適な都市環境をつくる努力が重ねられてきたが、人口の集中及び産業の集積が進み、都市活動が活発化したことに伴い、かつてない環境への負荷がもたらされてきている。
もとより、すべての都民は、良好な環境の下に、健康で安全かつ快適な生活を営む権利を有するとともに、恵み豊かな環境を将来の世代に引き継ぐことができるよう環境を保全する責務を担っている。
また、都民の福祉の向上を図ることを使命とする東京都は、現在及び将来の都民が健康で安全かつ快適な生活を営む上で欠くことのできない良好な環境を確保する責務を有するものである。
東京都は、これまで、環境行政の基本として、東京における公害を防止絶滅し、自然の破壊をくい止め、その回復を図るための施策を積極的に進めてきた。今後、さらに、環境への負荷の少ない都市を実現し、これを将来の世代に引き継ぐため、都民とともにより総合的計画的な取組を行うことが必要である。
このような認識の下に、人と自然とが共生することができる豊かな環境を保全し、創造するとともに、環境への負荷の少ない持続的な発展が可能な東京をつくりあげていくために、ここに、この条例を制定する。
第一章 総則
(目的)
第一条 この条例は、環境の保全について、基本理念を定め、並びに東京都(以下「都」という。)、特別区及び市町村(以下「区市町村」という。)、事業者並びに都民の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本的な事項を定めることにより、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の都民が健康で安全かつ快適な生活を営む上で必要とする良好な環境を確保することを目的とする。
(定義)
第二条 この条例において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。
2 この条例において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に基づく生活環境の侵害であって、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下、悪臭等によって、人の生命若しくは健康が損なわれ、又は人の快適な生活が阻害されることをいう。
(基本理念)
第三条 環境の保全は、都民が健康で安全かつ快適な生活を営む上で必要とする良好な環境を確保し、これを将来の世代へ継承していくことを目的として行われなければならない。
2 環境の保全は、人と自然とが共生し、環境への負荷の少ない持続的な発展が可能な都市を構築することを目的として、すべての者の積極的な取組によって行われなければならない。
3 地球環境の保全は、すべての事業活動及び日常生活において推進されなければならない。
(都の責務)
第四条 都は、環境の保全を図るため、次に掲げる事項に関し基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
一 公害の防止に関すること。
二 大気、水、土壌、動植物等からなる自然環境の保全に関すること。
三 野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保に関すること。
四 人と自然との豊かな触れ合いの確保、良好な景観の保全、歴史的文化的遺産の保全等に関すること。
五 資源の循環的な利用、エネルギーの有効利用及び廃棄物の減量に関すること。
六 地球の温暖化の防止、オゾン層の保護等の地球環境の保全に関すること。
七 前各号に掲げるもののほか、環境への負荷の低減に関すること。
2 都は、環境の保全を図る上で区市町村が果たす役割の重要性にかんがみ、区市町村が行う環境の保全のための施策を支援するよう努めるものとする。
(区市町村の責務)
第五条 区市町村は、環境の保全を図るため、その区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(事業者の責務)
第六条 事業者は、事業活動を行うに当たっては、環境への負荷の低減に努めるとともに、その事業活動に伴って生ずる公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するため、その責任において必要な措置を講ずる責務を有する。
2 事業者は、その事業活動に係る製品その他の物が使用され、又は廃棄されることによる環境への負荷の低減に資するために必要な情報の提供に努めなければならない。
3 前項に定めるもののほか、事業者は、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たっては、その事業活動に係る製品その他の物が使用され、又は廃棄されることによる環境への負荷の低減に資するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
4 前三項に定めるもののほか、事業者は、その事業活動に関し、環境の保全に自ら努めるとともに、都又は区市町村が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。
(都民の責務)
第七条 都民は、その日常生活において、環境への負荷の低減並びに公害の防止及び自然環境の適正な保全に努めなければならない。
2 前項に定めるもののほか、都民は、環境の保全に自ら努めるとともに、都又は区市町村が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。
(東京都環境白書)
第八条 知事は、環境の保全に関する施策の総合的な推進に資するとともに、都民に環境の状況、環境の保全に関する施策の実施状況等を明らかにするため、東京都環境白書を定期的に作成し、公表するものとする。
第二章 環境の保全に関する基本的施策
(環境基本計画)
第九条 知事は、環境の保全に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、東京都環境基本計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。
2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 環境の保全に関する目標
二 環境の保全に関する施策の方向
三 環境の保全に関する配慮の指針
四 前三号に掲げるもののほか、環境の保全に関する重要事項
3 知事は、環境基本計画を定めるに当たっては、都民の意見を反映することができるよう必要な措置を講ずるものとする。
4 知事は、環境基本計画を定めるに当たっては、あらかじめ東京都環境審議会及び区市町村の長の意見を聴かなければならない。
5 知事は、環境基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
6 前三項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。
(施策の策定等に当たっての義務)
第十条 都は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境基本計画との整合を図るものとする。
2 都は、都の環境の保全に関する施策について総合的に調整し、及び推進するために必要な措置を講ずるものとする。
(環境影響評価の措置)
第十一条 都は、環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業について環境の保全に適正な配慮がなされるように、その事業の実施が環境に及ぼす影響を事前に評価するために必要な措置を講ずるものとする。
(規制の措置)
第十二条 都は、公害を防止するため、公害の原因となる行為に関し、必要な規制の措置を講じなければならない。
2 都は、自然環境の保全を図るため、自然環境の適正な保全に支障を及ぼすおそれがある行為に関し、必要な規制の措置を講じなければならない。
3 前二項に定めるもののほか、都は、環境の保全上の支障を防止するため、必要な規制の措置を講ずるよう努めるものとする。
(誘導的措置)
第十三条 都は、事業者又は都民が自らの行為に係る環境への負荷の低減のための施設の整備その他の適切な措置をとることとなるよう誘導することにより環境の保全上の支障を防止するため、特に必要があるときは、適正な助成その他の措置を講ずるよう努めるものとする。
2 都は、事業者又は都民が自らの行為に係る環境への負荷を低減させることとなるよう誘導することにより環境の保全上の支障を防止するため、適正な経済的負担を課する措置について調査及び研究を行い、その結果、その措置が特に必要であるときは、そのために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(環境の保全に関する施設の整備等)
第十四条 都は、廃棄物及び下水の処理施設、自動車等の走行により発生する公害を防止する施設その他の環境の保全上の支障の防止に資する施設の整備を図るため、必要な措置を講ずるものとする。
2 都は、公園、緑地その他の公共的施設の整備その他の自然環境の適正な整備及び健全な利用のための事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
(資源の循環的な利用等の推進)
第十五条 都は、環境への負荷の低減を図るため、都民及び事業者による資源の循環的な利用、エネルギーの有効利用及び廃棄物の減量が促進されるよう必要な措置を講ずるものとする。
2 都は、環境への負荷の低減を図るため、都の施設の建設及び維持管理その他の事業の実施に当たって、資源の循環的な利用、エネルギーの有効利用及び廃棄物の減量に努めなければならない。
(都民の意見の反映)
第十六条 都は、環境の保全に関する施策に、都民の意見を反映することができるよう必要な措置を講ずるものとする。
(情報の提供)
第十七条 都は、環境の保全に資するため、第二十一条第二項に定めるもののほか、環境の保全に関する必要な情報を適切に提供するよう努めるものとする。
(環境学習の推進)
第十八条 都は、都民及び事業者が環境の保全についての理解を深めるとともに、これらの者による自発的な環境の保全に関する活動が促進されるように、人材の育成その他の必要な措置を講じ、環境の保全に関する学習の推進を図るものとする。
(都民等の自発的な活動の促進)
第十九条 都は、前条に定めるもののほか、都民、事業者又はこれらの者で構成する民間の団体による自発的な環境の保全に関する活動が促進されるよう必要な措置を講ずるものとする。
(調査及び研究の実施等)
第二十条 都は、環境の保全に関する施策を適正に実施するため、公害の防止、自然環境の保全、地球環境の保全その他の環境の保全に関する事項について、情報の収集に努めるとともに、科学的な調査及び研究の実施並びに技術の開発及びその成果の普及に努めなければならない。
(監視、測定等)
第二十一条 都は、環境の状況を的確に把握するとともに、そのために必要な監視、測定等の体制を整備するものとする。
2 都は、前項の規定により把握した環境の状況を公表するものとする。
(公害に係る紛争の処理及び健康障害の救済)
第二十二条 都は、公害に係る紛争について迅速かつ適正な解決を図るとともに、公害に係る健康障害の救済を図るために必要な措置を講ずるものとする。
(国及び他の地方公共団体との協力)
第二十三条 都は、環境の保全を図るための広域的な取組を必要とする施策について、国及び他の地方公共団体と協力して、その推進に努めるものとする。
第三章 地球環境の保全の推進等
第二十四条 都は、地球の温暖化の防止、オゾン層の保護等の地球環境の保全に資する施策を積極的に推進するものとする。
2 都は、国等と連携し、環境の保全に関する情報の提供、技術の活用等により、環境の保全に関する国際協力の推進に努めるものとする。
第四章 東京都環境審議会及び東京都環境保全推進委員会
(東京都環境審議会)
第二十五条 環境基本法(平成五年法律第九十一号)第四十三条の規定に基づき、都の区域における環境の保全に関して、基本的事項を調査審議させるため、知事の附属機関として、東京都環境審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、次に掲げる事項を調査審議する。
一 環境基本計画に関すること。
二 法令の規定(廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第五条の五第三項を除く。)によりその権限に属させられた事項
三 前二号に掲げるもののほか、環境の保全に関する基本的事項
3 審議会は、前項に規定する事項に関し、知事に意見を述べることができる。
4 審議会は、知事が任命する四十二人以内の委員で組織する。
5 委員の任期は、二年とし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。ただし、再任を妨げない。
6 特別の事項を調査審議するため必要があるときは、審議会に臨時委員を置くことができる。
7 専門の事項を調査するため必要があるときは、審議会に調査委員を置くことができる。
8 委員、臨時委員及び調査委員は、非常勤とする。
9 第四項から前項までに定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、東京都規則(以下「規則」という。)で定める。
(平一二条例二九・平一二条例一七七・平一五条例一二七・一部改正)
(東京都環境保全推進委員会)
第二十六条 知事その他の都の機関の環境の保全に関する施策について調査等を行い、その結果を知事に報告させるため、知事の附属機関として、東京都環境保全推進委員会(以下「委員会」という。)を置く。
2 委員会は、次に掲げる者につき、知事が任命する委員百人以内をもって組織する。
一 区市町村の長の推薦を受けた者 七十人以内
二 民間の団体の推薦を受けた者 三十人以内
3 委員の任期は、二年とし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。ただし、再任を妨げない。
4 委員は、非常勤とする。
5 前三項に定めるもののほか、委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
附 則
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行する。ただし、第二十五条、次項及び附則第三項の規定は平成六年八月一日から、第二十六条の規定は平成七年一月一日から施行する。
(東京都公害対策審議会条例の廃止)
2 東京都公害対策審議会条例(昭和三十五年東京都条例第七十四号)は、廃止する。
3 第二十五条の施行の日の前日において前項の規定による廃止前の東京都公害対策審議会条例第三条第一項の規定による東京都公害対策審議会の委員である者は、その任期の末日までの間、第二十五条第四項に規定する委員とみなす。
附 則(平成一二年条例第二九号)抄
(施行期日)
1 この条例は、平成十二年四月一日から施行する。
附 則(平成一二年条例第一七七号)
この条例は、平成十三年四月一日から施行する。
附 則(平成一五年条例第一二七号)
この条例は、公布の日から施行する。