○都民の就労の支援に係る施策の推進とソーシャルファームの創設の促進に関する条例
令和元年一二月二五日
条例第九一号
都民の就労の支援に係る施策の推進とソーシャルファームの創設の促進に関する条例を公布する。
都民の就労の支援に係る施策の推進とソーシャルファームの創設の促進に関する条例
目次
前文
第一章 総則(第一条―第七条)
第二章 都民及び事業者に対する支援等(第八条・第九条)
第三章 ソーシャルファームの創設及び活動の促進等(第十条・第十一条)
第四章 計画の策定等(第十二条―第十四条)
附則
東京は、日本の首都として、また世界有数の国際都市として発展を続けている。国内外から多様な人々が集い、多岐にわたる仕事を通じて社会経済活動を営んでいることが、東京の成長の原動力となっている。東京が活力ある都市として今後も持続的に発展していくためには、誰もが生き生きと働き活躍できるダイバーシティを実現し、互いの個性を尊重して認め合う共生社会を目指していく必要がある。
そのためには、東京都と都民、事業者等が相互に理解を深め、社会の一員として共に活動しながら支え合うソーシャル・インクルージョンの考え方に立って、希望する全ての都民の就労を支援していかなければならない。特に、この考え方は、就労を希望しながらも様々な理由から就労に困難を抱え、職に就けていない方や就労の継続が困難な方を支援していく上で重要である。
こうした中、東京で展開してきた様々な就労支援の取組に加え、自律的な経済活動を行いながら、様々な理由から就労に困難を抱える方が、必要なサポートを受け、他の従業員と共に働く社会的企業の創設を後押しする新しい視点も不可欠である。
ここに、就労を希望する全ての都民がその個性と能力に応じて働くことができるよう応援し、誰一人取り残されることなく誇りと自信を持って輝く社会の実現を目指し、この条例を制定する。
第一章 総則
(目的)
第一条 この条例は、就労を希望する全ての都民に対する就労の支援(以下「就労の支援」という。)について、基本理念を定め、東京都(以下「都」という。)の責務並びに都民、事業者及び区市町村(特別区及び市町村をいう。以下同じ。)の役割を明らかにするとともに、就労の支援に係る施策並びにソーシャルファームの創設及び活動の促進(以下「就労の支援に係る施策等」という。)の基本となる事項を定め、就労の支援に係る施策等を総合的に推進することにより、都民一人一人が個性と能力に応じて就労し誇りと自信を持って活躍する社会の実現に寄与することを目的とする。
一 事業者 都内で事業活動を行う個人及び法人その他の団体をいう。
二 就労困難者 就労を希望しながら、様々な事由により就労することが困難である者であって、その者の配慮すべき実情等に応じた支援が必要なものをいう。
(基本理念)
第三条 就労の支援は、都民一人一人が等しく尊重され、その個性と能力に応じた就労を実現し、社会を構成する一員として誇りと自信を持って活躍することを旨として、推進されなければならない。
2 就労の支援は、都、都民、事業者等が相互に理解を深め、社会の一員として共に活動しながら支え合うソーシャル・インクルージョンの考え方に立って、推進されなければならない。
(都の責務)
第四条 都は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、国、区市町村、事業者その他関係機関と連携し、就労の支援に係る施策等を総合的に実施するものとする。
(都民の役割)
第五条 都民は、基本理念について理解を深めるとともに、都が実施する就労の支援に係る施策等に協力するよう努めるものとする。
2 就労を希望する都民は、基本理念について理解を深めるとともに、就労に向けて自ら進んで取り組むよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第六条 事業者は、基本理念について理解を深め、従業員の雇用及びその継続並びに従業員が働きやすい職場環境の整備に取り組むとともに、都が実施する就労の支援に係る施策等に協力するよう努めるものとする。
(区市町村の役割)
第七条 区市町村は、基本理念にのっとり、地域の特性等に応じた就労の支援に取り組むとともに、都が実施する就労の支援に係る施策等に協力するよう努めるものとする。
第二章 都民及び事業者に対する支援等
(都民に対する支援)
第八条 都は、就労を希望する全ての都民に対して、次に掲げる就労の支援に係る施策を実施するものとする。
一 専門家による相談等、求人企業の開拓、求人情報の提供及び都の支援事業等に関する情報の提供
二 都立施設及び民間の教育機関等を活用した就労のための技能及び知識の習得による職業能力の開発及び向上
三 企業の現場における実習その他の職業体験、求人企業による説明会及び就職面接会等の機会の提供
四 就職後における専門家による助言、指導及び相談その他の職場定着への支援
2 都は、前項に規定する施策を実施するに当たっては、就労困難者と認められる者に対して、その者の配慮すべき実情等に応じた支援を行うものとする。
(事業者に対する支援等)
第九条 都は、事業者に対して、次に掲げる就労の支援に係る施策を実施するものとする。
一 従業員の雇用及びその継続に関する専門家による助言、指導及び相談並びに法令、都の支援事業等及び求職者に関する情報の提供
二 福利厚生及び休暇に関する制度の充実並びに多様で柔軟な勤務時間の設定等による従業員が働きやすい職場環境の整備に対する支援
三 事業者が実施する従業員の技能及び知識の習得による職業能力の開発及び向上に対する支援
2 都は、事業者に対して、事業者が従業員の雇用及びその継続、働きやすい職場環境の整備並びに従業員の職業能力の開発及び向上の取組を実施するに当たり、就労困難者と認められる者の配慮すべき実情等に応じて行われるよう支援するものとする。
3 都は、就労困難者と認められる者の多様な就労の実現を図るため、法令等に基づき、就労の機会の提供並びに就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練等の実施により就労を支援する事業所等の創設及び活動を促進するものとする。
第三章 ソーシャルファームの創設及び活動の促進等
(ソーシャルファームの創設及び活動の促進)
第十条 都は、前章に定める就労の支援に係る施策のほか、事業者による自律的な経済活動の下、就労困難者と認められる者の就労と自立を進めるため、事業からの収入を主たる財源として運営しながら、就労困難者と認められる者を相当数雇用し、その職場において、就労困難者と認められる者が他の従業員と共に働いている社会的企業(以下「ソーシャルファーム」という。)の創設及び活動の促進を通じて、就労の支援を効果的に実施するものとする。
(認証等)
第十一条 都は、ソーシャルファームの創設及び活動を支援するため、支援対象となるソーシャルファームを認証するものとする。
2 都は、ソーシャルファームの創設及び活動の支援に当たり、支援策等をとりまとめた指針等を策定するものとする。
3 支援対象となるソーシャルファームを認証する基準は、前項の指針等において定めるものとする。
第四章 計画の策定等
(計画の策定等)
第十二条 都は、就労の支援に係る施策等に関する事業の計画(以下「事業計画」という。)を策定するものとする。
2 都は、事業計画及び事業計画に基づく施策に係る実施状況を公表するものとする。
(施策の検証)
第十三条 都は、事業計画に基づく施策に係る実施状況の検証に当たっては、関係機関等の意見を聴き、施策に反映するよう努めるものとする。
(財政上の措置)
第十四条 都は、就労の支援に係る施策等を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
附則
この条例は、公布の日から施行する。