○東京都帰宅困難者対策条例
平成二四年三月三〇日
条例第一七号
東京都帰宅困難者対策条例を公布する。
東京都帰宅困難者対策条例
目次
第一章 総則(第一条―第六条)
第二章 一斉帰宅抑制に係る施策の推進(第七条―第九条)
第三章 安否確認及び情報提供(第十条・第十一条)
第四章 一時滞在施設の確保(第十二条)
第五章 帰宅支援(第十三条)
第六章 雑則(第十四条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この条例は、大規模な地震その他の災害(以下「大規模災害」という。)が発生したことに伴い、公共交通機関が運行を停止し、当分の間復旧の見通しがない場合において、多数の帰宅困難者(事業所、学校等に通勤し、通学し、又は買物その他の理由により来店し、若しくは来所する者等で徒歩により容易に帰宅することが困難なものをいう。)が生じることによる混乱及び事故の発生等を防止するために、東京都(以下「都」という。)、都民及び事業者(事業を行う法人その他の団体又は事業を行う場合における個人をいう。以下同じ。)の責務を明らかにし、帰宅困難者対策の推進に必要な体制を確立するとともに、施策の基本的事項を定めることにより、帰宅困難者対策を総合的かつ計画的に推進し、もって都民の生命、身体及び財産の保護並びに首都機能の迅速な回復を図ることを目的とする。
(知事の責務)
第二条 知事は、特別区及び市町村(以下「区市町村」という。)、事業者その他関係機関と連携し、大規模災害の発生時における帰宅困難者による混乱及び事故の発生等を防止するため、帰宅困難者対策について実施計画を策定し、総合的に推進しなければならない。
2 知事は、大規模災害の発生により、多数の帰宅困難者が生じ、又は生じるおそれがあると認める場合並びに帰宅困難者による混乱及び事故の発生等の危険性が回避され、安全に帰宅することができると認める場合は、区市町村、事業者その他関係機関との連携及び協力の下に、必要な措置を講じなければならない。
3 知事は、前二項に規定する帰宅困難者対策を実施するに当たっては、高齢者、障害者、外国人等の災害時に援護を要する者に対して、特に配慮しなければならない。
(都民の責務)
第三条 都民は、大規模災害の発生に備えて、あらかじめ、家族その他の緊急連絡を要する者との連絡手段の確保、待機し、又は避難する場所の確認、徒歩による帰宅経路の確認その他必要な準備を行うよう努めなければならない。
2 都民は、大規模災害の発生時に自らの安全を確保するため、むやみに移動しないよう努めるとともに、都、区市町村、事業者その他関係機関が行う帰宅困難者対策に協力し、かつ、自発的な防災活動を行うよう努めなければならない。
(事業者の責務)
第四条 事業者は、その社会的責任を認識して、従業者の安全並びに管理する施設及び設備の安全性の確保に努めるとともに、大規模災害の発生時において、都、区市町村、他の事業者その他関係機関と連携し、帰宅困難者対策に取り組むよう努めなければならない。
2 事業者は、あらかじめ、大規模災害の発生時における従業者との連絡手段の確保に努めるとともに、家族その他の緊急連絡を要する者との連絡手段の確保、待機し、又は避難する場所の確認、徒歩による帰宅経路の確認その他必要な準備を行うことを従業者へ周知するよう努めなければならない。
3 事業者は、管理する施設の周辺において多数の帰宅困難者が生じることによる混乱及び事故の発生等を防止するため、都、区市町村、他の事業者その他関係機関及び当該施設の周辺地域における住民との連携及び協力に努めなければならない。
4 事業者は、あらかじめ、大規模災害の発生時における従業者の施設内での待機に係る方針、安全に帰宅させるための方針等について、東京都震災対策条例(平成十二年東京都条例第二百二号)第十条に規定する事業所防災計画その他の事業者が防災のために作成する計画において明らかにし、当該計画を従業者へ周知するとともに、定期的に内容の確認及び改善に努めなければならない。
(事業者等に対する支援)
第六条 知事は、必要があると認めるときは、事業者等に対して支援を行うものとする。
第二章 一斉帰宅抑制に係る施策の推進
(従業者の一斉帰宅抑制)
第七条 事業者は、大規模災害の発生時において、管理する事業所その他の施設及び設備の安全性並びに周辺の状況を確認の上、従業者に対する当該施設内での待機の指示その他の必要な措置を講じることにより、従業者が一斉に帰宅することの抑制に努めなければならない。
2 事業者は、前項に規定する従業者の施設内での待機を維持するために、知事が別に定めるところにより、従業者の三日分の飲料水、食糧その他災害時における必要な物資を備蓄するよう努めなければならない。
(公共交通事業者等による利用者の保護)
第八条 鉄道事業者その他公共交通事業者は、公共交通機関の運行の停止により管理する施設内において多数の帰宅困難者が生じた場合は、管理する施設及び設備の安全性並びに周辺の状況を確認の上、都、区市町村、他の事業者その他関係機関と連携し、当該施設内での待機に係る案内、安全な場所への誘導その他公共交通機関の利用者の保護のために必要な措置を講じるよう努めなければならない。
2 百貨店、展示場、遊技場等の集客施設に係る設置者又は管理者は、設置し、又は管理する施設内で多数の帰宅困難者が生じた場合は、設置し、又は管理する施設及び設備の安全性並びに周辺の状況を確認の上、都、区市町村、他の事業者その他関係機関と連携し、当該施設内での待機に係る案内、安全な場所への誘導その他施設利用者の保護のために必要な措置を講じるよう努めなければならない。
(学校等における生徒等の安全確保)
第九条 学校(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号。以下この条において「法」という。)第一条に規定する学校をいう。)、専修学校(法第百二十四条に規定する専修学校をいう。)及び各種学校(法第百三十四条に規定する各種学校をいう。)並びに保育所その他の子育て支援を行うことを目的とする施設の設置者又は管理者は、大規模災害の発生時に、設置し、又は管理する施設及び設備の安全性並びに周辺の状況を確認の上、幼児、児童、生徒等に対し、当該施設内での待機の指示その他安全確保のために必要な措置を講じるよう努めなければならない。
第三章 安否確認及び情報提供
(安否確認及び情報提供のための体制整備)
第十条 知事は、大規模災害の発生時において安否情報の確認及び災害関連情報その他の情報(以下「災害関連情報等」という。)の提供を行うため、区市町村、事業者その他関係機関との連携及び協力の下に、情報通信基盤の整備及び災害関連情報等を提供するために必要な体制を確立しなければならない。
(安否確認手段の周知等)
第十一条 知事は、大規模災害の発生時において都民及び事業者等に対して安否情報の確認手段の周知及び災害関連情報等の提供を行わなければならない。
2 事業者等は、大規模災害の発生時において従業者、利用者等に対して安否情報の確認手段の周知及び災害関連情報等の提供に努めなければならない。
第四章 一時滞在施設の確保
(一時滞在施設の確保等)
第十二条 知事は、都が所有し、又は管理する施設の中から、大規模災害の発生時に帰宅困難者を一時的に受け入れる施設(以下この条において「一時滞在施設」という。)を指定し、都民及び事業者等に周知しなければならない。
2 知事は、一時滞在施設の確保に向け、都が所有し、又は管理する施設以外の公共施設又は民間施設に関し、国、区市町村及び事業者に協力を求め、帰宅困難者を受け入れる体制を整備しなければならない。
3 知事は、区市町村、事業者その他関係機関と連携し、大規模災害の発生時において帰宅困難者の一時滞在施設への円滑な受入れのために必要な措置を講じなければならない。
第五章 帰宅支援
(帰宅支援)
第十三条 知事は、区市町村、事業者その他関係機関との連携及び協力の下に、大規模災害の発生時における公共交通機関の運行の停止に係る代替の交通手段及び輸送手段並びに災害時帰宅支援ステーション(徒歩により帰宅する者に飲料水、便所、災害関連情報等の提供等を行う店舗等をいう。)を確保するとともに、災害関連情報等の提供その他必要な措置を講じることにより、帰宅する者の安全かつ円滑な帰宅を支援しなければならない。
第六章 雑則
(委任)
第十四条 この条例の施行について必要な事項は、知事が定める。
附則
この条例は、平成二十五年四月一日から施行する。